⑦オオカミさんと。溺れる愛の行く先に【番外編も完結】
《視点 大神秋人》

「フン、まるで『美女と野獣』だな」
「秋人サン失礼ですよぉ。…まあ分からなくもないですけど?」

会場の中程の席で、俺と燈子は雛壇の様子を伺っていた。
燈子のベビースリングの中では、ボウズがソワソワと蠢(うごめ)いている。
見慣れぬ顔が次々と覗いてゆくので、興奮しているらしかった。

「あ、スピーチ終わりしましたよ、行きましょう」
 
“暫しの歓談”が告げられると、燈子は嬉しそうに俺を引っ張っていった。


「よお!大神ぃ~」 
熊野が、これまでにない嬉しそうなニヤケ顔で立ち上がる。

併せて花嫁がスラリと立ち上がり、淑やかに会釈した。
 
「これはこれは、美しい方だ…熊野(バカ)には勿体無い…」
「キャっ…」
挨拶がてら、純白の手袋をした細い腕をとると、

「触んなっ、ケガれるっ」

熊野が青筋を立ててそれを祓った。

「イテテ…冗談。社交辞令だよ…」
 
花嫁がたおやかに微笑んだ。

「しかし……大神にソックリだな…」

スリングの中を覗き込んだ熊野が、何とも言えない顔をすると、ボウズは不快そうに眉をしかめている。
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