花京院家の愛玩人形


時は移ろい、暗い曇天に紫陽花の花が映える季節。

いつも通り登校し、いつも通り退屈な授業をこなし、いつも通り家路につくはずだったある雨の日の放課後、高台に建つ某私立高校は隕石落下級の衝撃に包まれた。

理由は、ハイ、コレ。

校門の前に、ドーリィフェイスの完璧な美少女が立っていたから。

ナニが完璧って?

いや、全部。
全部が完璧だから、『完璧』っつーンだよ。

湿気なんてものともしない、艶やかに波打つ栗色の髪も。

全力で守りたくなるような。
でも、たまにイジワルして泣かせたくもなるような、儚げで愛らしい容姿も。

白いハイネックブラウスと紺のスカート、同じく紺のパンプスという清楚な服装も。

まるで作り物のように、トータルで完璧。

そしてそのドーリィ美少女が、紫陽花色の傘を揺らして…

なんと!?

校舎から出てきた、学校一地味で空気な男、花京院 要に可憐な笑顔で会釈したからぁぁぁぁぁ!!??

帰ることも忘れて、彼女をガン見していた生徒たち。
部活に行くことも忘れて、彼女をガン見していた生徒たち。
部外者の来校を注意することも忘れて、彼女をガン見していた教師たちですら。

その場に居合わせた全員が、落雷による感電レベルで身を震わせた。

二人の会話もね?
こんなんデスヨ。


「どうしたの?」


「お買い物の帰りに、通りがかりまして」


「わざわざ坂を登って?」

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