Hell・God
ヨシュアの過去


「いらっしゃいいらっしゃい!今日は香辛料が安いよ~!」


15世紀末、ポルトガルの町。


商人たちが布を広げ、色々な物を売っている。


ぼく――ヨシュアの親は伝染病で亡くなってしまった。

左手には硬貨、『レアル』を握りしめ、ポルトガルの町を歩いていた。


ヨ「…何が安いだ。香辛料だけで銀の価値があるなんて、ぼくには信じられないね!」


「ははっ、何言ってんだこのガキ!ガキだから価値が分からないんだよ」ゲラゲラ


笑い者になったっていい。

今、ぼくは8才。もちろん雇ってくれるところなんてありゃしない。

親が残してくれた、少しの財産で生きていかなければならない。



ヨ「おじさん」


商人「なんだい、ボウズ」


ヨ「それ、ください」


ぼくが指したのは大きな肉だった。

もちろん、今手にある分じゃ買えないことくらい分かっていた。


商人「18レアルだ。」


ヨ「…」


今ぼくが持っているのは、5レアル。

全然足りない。


ぼくは硬貨を握っていた左手を商人に向けて開いた。


商人「いち、にぃ…5レアルか!?」


商人は驚いた顔をした。


ぼくはゆっくりと、そして静かに頷く。


商人は困った顔をしていたが、やがてため息をつき――


商人「…5レアル。今回だけだ。見るとかなり貧しいみたいだからな。ボウズ、服くらい買っとけばどうだ?」


そう言われても仕方ないと思った。

今着ている服は、所々穴が開いていて、土で汚れている。


服がなくて、毎日この服を着ている。


ヨ「ごめんなさい。そしてありがとう、おじさん」


商人「ま、まだ子供だしな。これくらい大したことねぇって。お前、親御さんはどうした?はぐれたのか?」


ヨ「…いない。お母さんもお父さんも、死んだ」


商人「!…すまん、悪いこと聞いちまったな」


ヨ「別に気にしてないよ。」


ぼくはその場を立ち去った。


着いたのは、ぼくの家。


ヨ「ただいま」


返事がない。


こんな生活を、毎日続けている。


「…」


ぼくは無言で、キッチンに向かった。


ナイフで買ってきた肉を切る。


…香辛料というものを買ってみたい。


どんな味がするのだろうか。


一度でいいから、食べてみたい。



そうだ、あの商人のおじさんの所に行けば――。






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