俺様上司と身代わり恋愛!?


あの時の課長の声のトーン。伏せた瞳。冷めて感じた雰囲気。

そのどれもが翌日になっても瞼の裏にでも張り付いたようにすぐに思い出され、そのたび胸が締め付けられる思いがした。

でも、当たり前なのかもしれないけれど、昨日の事があってからも課長は普段通り私に接してくれているから……午後には、私も考えすぎない方がいいと無理やりに気持ちを切り替えた。

ここは仕事の場だ。
そう、一昨日今野さんに言ったのは私だ。

プライベートで落ち込む事があったとしても、ここには持ち込むべきじゃない。

午後の仕事はサンウェルさんからの振込確認から始まり、昨日課長とごちゃごちゃしていた件があるだけにビクビクしながらの作業になった。

けれど、幸い、今日は大澤さんがお休みだとの事で無事処理を終える事ができた。

不正な引き出しがあったんじゃないかとの疑いから始まった昨日の件は、結局大澤さんの勘違いという形で幕を下ろしたらしい。

最後には大澤さんが謝っていたらしいと聞いてそれには結構驚いた。
だって大澤さんは今まで自分が悪くても謝ったりした事は一度たりともなかったから。

そんな話をしていたら恩田さんは〝課長相手だからじゃない? 美形だから〟と、言っていて、ああ……と思った。

大澤さんが課長にそこまで強く出ないのは前からで、大澤さんが課長を気に入っているんじゃないかと課内でささやかれ始めたのももう随分前だから。



< 116 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop