俺様上司と身代わり恋愛!?


すぐに書庫室での事が頭に浮かんで、ばっと課長を振り返る。

「見てたんですか?!」
「たまたまな。俺が書庫にいたらおまえらが入ってきて話し始めたから」

「いい感じに話してたな」と言う課長に、まんざらでもなくて顔がにやけてしまう。

「志田さん、噂通りいい人でした。ああいう人がモテるの、分かります」
「人当たりが柔らかいからな。
でも、おまえ、今まで好きになった男みんなダメ男なんだろ? その原理でいくと志田も怪しいってなるけどな」

ポーンという音のあと扉が開くと、課長がスタスタ歩き出すから、その後を追う。

従業員用通路も、五階同様にシーンとしていた。
スクエア型の石が敷き詰められている通路に、課長の革靴がカツカツと響く。

「私の過去の男原理でいくなら大丈夫ですよ。
だって、今までの人はみんな向こうから告白してきてくれた人ばかりですから。
自分から好きになって付き合った人っていないんです」

「だから」と答えると、桐崎課長が苦笑いを吐き出した。

「ダメ男に好かれる性質か」
「でも今回は志田さん、別に私の事好きでもなんでもないし。きっといい人ですよ」
「だといいけどな。まぁ、上手くいくかどうかは別として、おまえの気持ち知った以上応援はしてやるから頑張れよ」
「ありがとうございます」

にこりと笑いかけると、課長は「ああ」と前を向いたまま言い、従業員出入り口横にあるモニターに視線を移した。

モニターに映るのは、出入り口の外の様子だ。


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