好きだと気づく30センチ
 自転車のハンドルの所にだらしなく両腕を乗せて前屈みの状態で私を見上げるクワガタ。

 その笑顔に、なんでかドキっとした。

「よろしく、ヒヨコ」

 私は熱い頬を誤魔化すように前を向いて、不機嫌な顔をつくる。その隣で笑う声。

 なんか悔しいけど、無駄にカッコいい。本人には言ってやらないけど。

 同じスピード、同じ風になびく二人の髪。

 初々しいそよ風吹く通学路で。
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