魔王と猫女



スッと頬を撫でられる感覚に、椿は目を覚ました。


枕が濡れているのが分かり、幾度となく見た夢をまた見ていたのだと、ボンヤリとした思考の中で確認する。


「どうして泣く。」


不意に頭上から落ちてきた声に視線を動かすと、自分を見つめる真っ黒な瞳を持つ、全体的に真っ黒な・・えー、人間に二本の角を生やした奴を発見した。


「・・・・。」


「おい、まだ寝ているのか。」


その黒い奴は私に顔をグイと近づけ、目をのぞき込んでくる。


近い近い近い近い


それ近すぎて逆になんも見えねーだろ!


「・・・あの」


「なんだ」


相変わらず距離は近すぎるままだ。


「近いです。」


「そうか。」


・・・返事はあるもの、距離は変わらない。


いや息!かかってるんだけども!


「はい。」


「なんで泣いていた。」


「え?」


その話、この距離でしなきゃダメか?てかお前だれだよ。その角なんだよ。


「答えろ。」


「か、悲しい夢を見たから・・・?」


有無を言わさぬ追及に思わず答えたが、状況を把握できず、混乱のあまり疑問形でこたえてしまう。


「そうか」


とりあえず、納得はしてくれたようだ。


近いままだが。


< 8 / 8 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

サクラ学園

総文字数/2,517

ファンタジー8ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
桃井 鈴(ももい すず) ・・・風を操る力を持つ、黒髪寸胴天然少女。この物語の主人公。 新 瞬(あらた しゅん) ・・・電気を操る力を持つ、黒髪美形ドS少年。 黒崎 アレン(くろさき あれん) ・・・水を操る力を持つ、謎の多い金髪天才根暗少年。 中島 鈴音(なかじま りんね) ・・・心の中を読む力を持つ、桃色髪の無口ツンデレ少女。 この4人が出会ったのは運命? それとも―――― 不思議な力を持った子供たちが集う サクラ学園。 “世界のはみ出し者のための学校” そう呼ばれるこの学園に、新たな入学者がやってきた。 「うはぁーーーっ!おっきー学校!!」 桃井 鈴 学園に、新風が吹きぬけた。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop