不器用少女の恋
「…大丈夫か?」


「はい」

私は俯いたまま応えた。


「あれ、元カレ?」


「…わかりません」

前を向いたままの瑠衣くんと言った。


「わからない?」


「自然消滅っていうか、別れてたこと今日知ったっていうか、」


「そっか」


「はい」


「まだ好きなの?」

そんなの…


「……はい、好きです」


「なら、振り向かせないとな」

信号で車が止まり、横を向いた瑠衣くんが私の頭を撫でた。

私は首を横に振った。


「諦めるのか?」


「…最初はずっと一緒にいたんです。でも、いつからか、修哉はさっきの子といるようになりました。修哉が幸せなら、それでいいんです」


「自分と幸せになろうとは思わないのか?」


「…私の幸せは、修哉の幸せだから」

修哉が笑っていてくれるなら、それでいい。


「愛由香は、俺よりずっと大人だな」


「え?」


「すごいことだよ、そこまで人の幸せを願ってあげられるのは」


「そんなことないです」


「俺は、愛由香の幸せを願ってるよ。愛由香の分も」


「…ありがとうございます」

そして、また車が動き出した。
< 14 / 35 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop