追いかけっこが、終わるまで。
開いた口が塞がらない、という風に口を開けた美和の顔を見つめる。

会社帰りにゆっくり話したい時に来るイタリアンで、美和に今までのことをかいつまんで話した。



合コン帰りにホテルに行ったけど、寝ている光輝くんを置いて帰ったこと。

バーベキューの後送ってもらうはずが、彼の部屋に泊まったこと。

先週はメッセージのやり取りを少しして、土曜はただ送ってもらって、日曜は忘れ物を届けてもらって軽くランチをしたこと。



事実だけを話すように気をつけた。

光輝くんが長谷川先輩だというあたりは、ややこしくなるので割愛。

客観的に見て、今はどういう状態なのかコメントして欲しいと思って。



「で、付き合ってるってこと?」

放心状態から帰ってきた美和に聞かれた。

「それが私も知りたいなって感じ?」

他人事みたいに答える。

普段口を挟む暇がないくらいよくしゃべる美和が、言葉を失っている。ごめん、予想外過ぎて、と謝られた。



一拍置いて、長くカールしたまつげをふわっと瞬かせると、いつもどおりの快活な口調を取り戻す。

「今までの細かいことは私からは聞かない。光輝くんも多分速人に話してないし、2人にしかわからないことがきっとあるんだろうから。

聞きたいのはね、リサは、これからどうしたいのかってこと。

ちゃんと付き合いたいって思ってる?それとももしかして迷惑してる?」



迷惑?

それこそ予想外なんだけど。なんで私が迷惑するの。



「リサはその時限りのつもりだったのに、私達がおせっかいして何度も会わせちゃったってことでしょ」

顔をしかめるようにして美和が続けた。



そう聞こえるんだ。嫌がってるのに流されてるかもってこと?

「そんな風に、思ってない。ただ、光輝くんが何考えてるかよくわかんないだけ」

「何言ってるの、光輝くんはリサが好きで追っかけてるんでしょう」

「だって、会いたいとか一度も言われてないし、昨日だってたまたま忘れ物があっただけで、次の約束もしてないし。そもそも付き合おうとか言われてないもん」

この際ふてくされてるのを隠さず言ってみる。

キスもしなかった、というのはさすがに言えないけど。
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