追いかけっこが、終わるまで。
本屋さんを出た時、思い切って私から手をつないだ。

「よし。やっと懐いてきたか」

また覗き込まれて、つながった指を絡め取られた。

「手なずけられてるの?」

「そうだよ、知らなかった?」

どういう意味よ、それ、と思って顔を背ける。嫌な顔をしようと思ったのに、うまくいかずに笑ってしまった。

どう思われててもいいや、もう。



今すごく楽しいから。今日も天気がいいな、と空を見上げる。




なんとなく黙ったまま、2人でのんびりと歩いた。

沈黙してても楽しそうとかも反則。と横顔に心の中でダメ出しをする。

スーパーの前で、夕飯はパスタでいいかと聞かれ、買い物するのかと思いきや素通りし、部屋に連れて行かれた。




「なんか飲んでて。すぐできる」

お言葉に甘えてベランダでワインを飲みながらまた夜空を見上げていたら、本当にあっという間に前菜とパスタとサラダが出来てきた。



2人掛けの小さなダイニングテーブルで乾杯する。

料理を褒めると、好きなんだよ、と笑って、学生時代に和食屋でバイトをしていた話をしてくれた。

なんで今日はパスタ?と聞くと、昨日うまそうなアサリが売ってたから、と言う。

アサリのパスタが好きなんだって。期待通り、目の前の好きなものを追っかけてる人なんだ。

和食屋さん関係ないね、となんだかおかしくてケラケラ笑うと、いきなり和食とかお母さんみたいだろ、と言われてまた笑った。



来る前に緊張してたのはなんだったのかわからなくなるくらい、私はまたよく喋った。グラスは途中で取り上げられて、お水に変わっていた。

酒グセわるいからなあ、と真顔で言われてへこむ。

普段はもっとちゃんとしてる、と言っても信じてもらえない。

今日は記憶なくされたくないんだよね、と言われて、そうだ、話があるって言われたんだと、急に酔いが覚めた気がした。
< 44 / 62 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop