未熟女でも大人になっていいですか?

いつまでも、貴方だけを……

「メダカーの学校のーメダカたちー。誰が生徒か先生か。誰が生徒か先生か。皆で元気に遊んでるーー」



「お母さん、もう一回歌ってぇ!」


「ええ!?また歌うの?」


何回目?と藤の顔を見る。

亡くなった夫に目元が似ている娘は、足元を流れる川の中を指差した。


「だってね、その歌を歌うとメダカさん達が嬉しそうなの!それにね、カツラ、その歌聞くの大好き!いつか学校の先生になって、生徒と一緒にお遊戯とかしたら楽しいなって思う!」


「学校の先生になりたいの?」


「うんっ!」


キラキラと輝く瞳はあの人と同じ夢を追ってる。


「そっかぁ。じゃあカツラが先生になれるよう、もう一回歌ってあげようね!一緒に歌おう。夢が現実になるように!」


遺骨を納めた納骨堂の菩提寺の側には小川があって、私と藤はいつもそこへ遊びに出かける。

特に春先の川縁にはメダカが群れて泳いでる。

何気に思い出した童謡を聞いて藤の夢が広がっていった。




「蛙の子は蛙ね。藤は学校の先生になりたいそうよ」


狭い箱の中に納まっている人に話し掛けた。


「何の教科を教えるようになるかしら。国語だといいわね」


まだまだ先のことだよ…と返事が聞こえそうな気がする。


「ふふ。そうね。まだ小学一年生だもんね」


夫が亡くなって2年。月日はなかなか前へ進まない。


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