未熟女でも大人になっていいですか?
「上がってもらえよ。雨の中で立ち話するのも何だし」


ビクッとする私に視線を注ぐ。

声には出さないけれど、一緒に居てくれるみたい。



「……ど、どうぞ」


観念して扉を開いた。


「お邪魔しまーす!」


上谷さんの声が響く。


「突然来たのに申し訳ありません」


礼儀正しい仕草を見せる立石君。

優等生っぽいところが昔とちっとも変わっていない。


「先生ん家来たの初だな!写メっていいっすか?」


無遠慮な感じが琴吹君らしい。

好奇心旺盛で何にでも首を突っ込んでいた。


「写メるのは後でもいいだろ。とにかく早く上がれ」


家主の様な顔つきで3人を急かせる。

仏壇の置いてある和室へと通し、座布団を勧めてくれた。


その間、私はコーヒーを淹れる。

お茶菓子がなく、おつまみ用の柿の種を小鉢に盛った。



「ごめんなさい。美味しいものが何も無くて…」


言い訳しながらテーブルに置くと、琴吹君が嬉しそうに笑った。


「俺、柿の種大好き!」


「私も!特にこの黒胡椒味がお気に入り」


ミニパックの一つを取り上げ、ゆらゆらと揺する。


「お前達、少しくらい遠慮しろよ」


立石君が呆れている。


その様子は10年前と変わらない。

外見は立派な社会人だけれど、中身は学生のままだ。


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