未熟女でも大人になっていいですか?
恩師の元へ…
「へぇー、旅行に行くんだー、いいわねぇー」


音無さんは羨ましがった。

月曜日のお昼、カフェテリアで休憩中。


「左官の師匠に会わせてくれるんですって。それからご両親にも挨拶に行くつもりみたい」


「わぁ。緊張するわね」


「うん。今からドキドキしてる」


「仙道さんなら気に入られるから大丈夫よ」


「私は自信ないけど?」


「平気、平気!いつものようにしてればいいんだから」


(いつものよう…?)


その『いつも』が自分でも分からない。

とにかく要らないことは一切言うまい。

ぐっと堪えてじっと黙っておくんだ。


「音無さんがご主人の実家に伺った時は手土産か何か用意した?」


「私は初めての時はお茶菓子にケーキを持って行ったけど…何?そんなの心配してるの!?」


「だって、手ブラというのも何だか変だし」


「相手のご両親が喜ぶ物聞いてみれば?」


「それができればとっくにしてます」


高島は両親の話になると不機嫌で声もかけづらい。

相談も何もできない状態で、だから音無さんに聞いているのだ。


「男って親に対して変なプライド持ってるからね。超えなきゃいけないとか、バカみたいに競うし」


「音無さんのご主人も競ってるの!?」


「うちのはそんな風に見えるってだけ。でも、負けないように意識はしてるみたいだけど」


「ふぅん」


呑気そうに見える高島も同じだろうか。

両親のことを口にしないのも自分のプライドが高いせい?


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