悪戯な唇

彼が梨花に意味深に微笑み、給湯室を出て行く後ろ姿をただ見ている私。


梨花と2人きりになった瞬間に、彼女が叫びだす。


「ちょっと、ちょっと…どうなってるの?あんた達いつから付き合ってるのよ」


付き合ってる⁈


キスをしていただけでそう見えたのだろうか⁈


曖昧に笑ってごまかしても、梨花は引き下がらない。


「いつもクールな篠川さんが、あんな甘い顔するなんて知らなかったわ。まぁ、美羽限定なんだろうけど…最近、美羽が昼休憩の付き合いが悪かったのは彼のせいだったのね。付き合ってるなら教えてくれればよかったのに…」


むすっとして頬を膨らませる梨花は、腕組みをしてお怒り気味だ。


「……つきあって…ないよ」


「ハァッ?」


「だから、キスだけの関係なんだって…」


「意味わからないんだけど?」


「だよね…私の唇、キスしたくなる唇なんだって…」


「はい?そんな理由でつきあってもないのにキスしてる訳?美羽はどうなのよ?」


「わたし⁈……ねぇ、キスから始まる恋ってあると思う?」


「……あるんじゃない。キスしてみて、ビビビッて感じるみたいな感じだったの⁈」
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