サヨナラケイジ
寮母の“よしこちゃん”にうるさく言われるのもイヤだし…。


「よし。コンビニから帰ってきて、まだここにあったら届けてあげるね」


財布にそう告げると、私は元の位置に戻した。

ちょっと罪悪感はあるけれど、今は急いだ方がよい。


よしこちゃんが怒ると、手をつけられないからなぁ……。



「琴葉ちゃん、今帰り?」


コンビニの自動ドアをくぐると、店長の奥さんが声をかけてきた。

この、小さな町にコンビニはひとつしかない。

奥さんともすっかり顔なじみだ。


「そうなの。遅くなっちゃった」


答えながら、明日の昼食分のパンと麦茶を選んでレジに持っていく。

昼休みに購買部に並ぶくらいなら、前の日に買っておくほうが時間を有効につかえるので、いつもそうしている。


「まさか、補習受けてたとか?」

奥さんがいじわるそうに笑う。


「違う違う。友季子としゃべってただけ」


「あら、友季子ちゃんは?」

おつりを手渡しながら奥さんが尋ねる。
< 3 / 283 >

この作品をシェア

pagetop