イジワル上司に焦らされてます
 


「すみません、僕の言い方が悪かったです。僕も日下部さんと同じで、今回の仕事を通して多くの方に笑顔を届けたい。そして、それは日下部さんと一緒にできたらいいなと思っています」



まだ、一度も手を付けることのできていないコーヒー。

その上に涙が落ちてしまったら、辰野さんがオススメだというせっかくの味が台無しになってしまう。



「だから、もう一度、お互い気合を入れて頑張りましょう。新しいネームとロゴ案も、楽しみにしています」

「……っ、ありがとうございます。私、頑張ります。絶対に、良いものを造りますっ」



必死に瞬きを繰り返しながらそう言えば、向かいの席から「はい、楽しみにしてます」という優しい声が返ってきた。

嬉しい。まだ、仕事ができる。

バカな私をもう一度信じてくれて、一緒に良いものを造ろうと言ってもらえたことが何よりも嬉しくて堪らない。



「それにしても……うん。非常に申し訳ないけれど、僕的には、かなり美味しい展開です」

「……え?」

「 " 私にできることがあれば、なんでもする " ……って。もちろんそれは、公私混同可能ですよね?」



けれど、次の瞬間聞こえてきた思いもよらない言葉に顔を上げれば、驚いている私を見てニッコリと微笑む辰野さんがいた。

頬杖をつき、綺麗に弧を描いた唇。

その唇が次に何を言い出すのか、声をなくして固まっていると、再び辰野さんが楽しそうに口を開く。

 
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