ラブ アゲイン
am2:00
遠くで跳ねる水の音で、菜々は目を覚ましたが、見慣れぬ天井に暫くここが何処なのか、理解出来ないでいた。


「そうだ、ここって渉ちゃん家だ……」

記憶の断片が徐々に明らかになるにつれ、鼓動が早くなる。

今菜々は濱田のベッドに横たわっている。

「っ……いったぁ…」

飛び跳ねるように起き上がると、酷く頭が痛む。

「飲み過ぎ?」

菜々はこめかみを両手の指で押さえながら独り言を言う。

辺りを見渡すが、濱田の姿は無い。

やだ、私ったら飲み過ぎて、寝ちゃったんだ、で、渉ちゃんがベッドに寝かしつけたんだ。

きっとそうなんだ。


バタン


どこかのドアの閉まる音がして、スリッパの音が近付いて来た。

何故か菜々は慌てて布団に潜り込み、寝たふりを決め込んだ。


キィ……

「菜々?………」

濱田が寝室のドアを開けて入って来た。

一度発したきり、空気は動かない。


暫くして、濱田はベッドに近付いて、そっと腰を下ろす。


「なな……」

布団から出ている菜々の頭を優しく撫で、また、濱田は語りかける様に菜々の名前を呼ぶ。

たったそれだけだった。

「な、な…?」

ゆっくりゆっくり、そして優しく菜々の髪を撫でる。


濱田の表情は解らない、だけど、自分を呼ぶ濱田の声が、触れる指先が、菜々の心の何処かに封じた何かに触れた。

自然と涙が溢れ出す。

自分の流す涙の意味が、漠然としてではあるけど、菜々はそれを抵抗なく受け入れた。

私はまだ、渉ちゃんが好きなんだ……





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