ラブ アゲイン
どれ位泣いただろうか、涙と鼻水で顔を上げられず、様子を伺う菜々。

その間中、私の頭をトントンと優しく撫でてくれていた濱田。

濱田の左腕にしがみ付いて嗚咽を漏らしながら泣き叫んだ菜々。

気持ちの落ち着きを取り戻すと同時に醜態を晒した後悔が押し寄せる。

どうしよう、顔が上げられない。


すると、頭上から溜息が聞こえた。

呆れてるんだ、菜々は益々顔が上げられない。

「ったく、喜怒哀楽が激しいのは相変わらずか」

そう言って濱田は菜々から体を少し離す。


サイドテーブルに置いてあるティッシュを一枚二枚と抜き取り、菜々の鼻先に近付ける。


「ほら、鼻水で顔、ぐちゃぐちゃだぞ?」

「………あ、ありがとう」

自分でもびっくりする程の鼻声に、濱田は泣きすぎだと、笑いながら菜々の顔を覗き込む。

「やだっ、見ないで」

消え入るようなか細い声、菜々は目頭と垂れた鼻水をティッシュで拭く。

「そうじゃなくて、ちゃんと擤まなきゃ、ほらちーんして」

ちーんしてって、子供じゃない、また口をついて飛び出しそうになる言葉を、菜々はぐっと堪える。

「ほら、早く!」

こうなると濱田は引かない。彼も頑固なのだ。

子供にするように鼻先にティッシュを付けられ、菜々は仕方無く、少し力を入れた。

ズズズッ

「そうじゃなくて、もっと力入れなきゃ擤めないだろ?」

もう、昔を知る男って、デリカシーなさすぎる、菜々は開きなった。


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