エリート上司と偽りの恋
「じゃー後はこちらで進めていくから、加藤さんは仕事に戻ってください」

「分かりました」

私がお辞儀をすると自然と拍手が巻き起こり、会議室を出るときにドアのところまできてくれた主任が「ありがとう」と囁いてくれた。


外に出た私は、ドアに寄りかかりフーッと肩の力を抜く。

みんなに拍手をされ、主任にありがとうと言われた瞬間、今まで感じたことのない気持ちが胸いっぱいに広がった。


平凡普通が一番いい、与えられた仕事をこなすだけで満足だと思っていたけれど、仕事で認められるってこんなに嬉しいことなんだ。

これからも営業事務として今までと変わらない仕事をしていくけど、ほんの少しだけ仕事に対する気持ちが変わったような気がした。



三階に戻った私は、営業事務のメンバーにさっきまでの経緯を説明すると、みんなものすごい喜んでくれた。


鈴木さんは「営業事務の誇りだよ」なんて言ってくれて、大袈裟だけどみんなの言葉がうれしくて、泣きそうになってしまった。


仕事でこんな気持ちになれたのも、ただの走り書きに気がついてくれて、それを表に出してくれた主任のおかげだ……。




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