エリート上司と偽りの恋
「みんなに好かれたいって思ってた私は、自然体でいられる麻衣に嫉妬してた。それに、麻衣は私よりもずっと正義感が強かったでしょ?そういうところも羨ましくて……」


「結衣……」


「私ずっと悩んでたんだけど、彼と出会って気づいたんだ。自分が大切だと思える人たちが好きでいてくれたら、それだけでいいんだって。そしたら不思議とすごーく楽になったの」


結衣がそんなことを思ってたなんて、全然知らなかった。結衣の瞳が潤んでいることに気づいた私は、とても悔しい気持ちになった。

自分だけが辛くて、自分だけが悩んでるんだと思ってたのに、結衣も同じだったんだ……。


「麻衣も悩んでたんでしょ?言っとくけど、私も麻衣の気持ちに気づけなかった。だからお互い様だね」

まるで私の心を読んだかのように、結衣は笑ってそう言った。



「結衣……私ね、好きな人がいるの。すごく、好きな人が……」


黙ってうなずく結衣。

私の大好きな人は、あなたに一目惚れしたんだ。知らない他の誰かならよかったのにって、何度もそう思った。


「結衣には分かっちゃうかもしれないけど、最初はかっこいいって思ったことから始まったの。だけど気づいたら、顔だけじゃなくて声とか仕草とか優しさとか、全部が好きだって思えるようになってた」

私の言葉に、結衣はクスッと微笑んだ。


「でも……その人は……」


私が黙ってうつむくと、結衣は私の肩をポンと叩いた。


「私が最初どうして彼を好きになったか知らないよね?彼の顔だよ」

「……え?顔?」

「そう、顔。すごく好きな顔だったから、それから彼のことが気になるようになって、性格を知ったのはその後だよ」


驚いた顔をしている私を見て、結衣はプッと噴き出した。

「麻衣は面食いだけど、私だって同じだよ。だけど好みは人それぞれ、私にとっては彼が世界一かっこいいと思ってるから」



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