エリート上司と偽りの恋
番外編 *ある、初めての朝*

 ◇


カーテンから漏れる朝日に気がつきゆっくり目を開けると、隣に寝ている彼の右腕が、私の体を包み込んでいる。

起こさないように、そっと自分の体を彼の方に向けた。


昨日私は、晴輝の家で夜を一緒に過ごした。つまり初めてのお泊まり。


小さいボトルに詰め替えた基礎化粧品に、かわいいパジャマにかわいい下着。準備は万端だったはずなのに……。


いざ綺麗に整理された無駄なものが一切ない晴輝の部屋に入ったら、いい歳して緊張が止まらなくなってしまって……。

結果飲み過ぎて、気づけば朝になっていた。


化粧は落としてないから、肌はきっとボロボロだ。


しかもせっかく買ったかわいいパジャマも着てないし、かわいい下着だって……。

いや、それは別にいいか……。



ていうか晴輝って……やっぱかっこいい……。

瞑った目には、女の私が羨ましく思ってしまうほどの長いまつ毛。

十センチの距離にある彼の寝顔を見つめていると、瞬きさえも忘れてしまいそうになる。


胸のドキドキを抑えながら、少しずつ彼の顔に近づいた。


だんだんと近づく彼の唇。


……だんだんと。

……だ……だめだ~。


やっぱ無理、かっこよすぎて自分からなんて絶対無理!


そう思い、近づいた自分の体をもとの位置にもど……らない?


いつの間にか彼の右腕にグッと力が入っている。


「もう、終わり?」

「……え?」


さっきよりも更に力が入った右腕が、私の体を五センチの距離まで近づけた。


ちょ、ちょ、ちょっと……。

「ダメダメ!化粧落としてないし、肌テッカテカだし!近くで見られるのは……」


「かわいいよ」


顔を隠している私の手を晴輝が握って、ゆっくりとどかした。

あと二センチで、彼の唇に届いてしまう。


晴輝と過ごす初めての夜は酔い潰れてしまったけど、晴輝と過ごす初めての朝は……。


これから始まる……みたいだ……。




「大好きだよ、麻衣」






 ◇



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