御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~
失恋秘書と御曹司、正直になる

 それから美月は、病院のトイレでじゃぶじゃぶと顔を洗い、すっぴんで病院のエントランスへと向かった。

 しのぶは客先に行かなければいけないということだったので、その場で別れる。


(帰ろうかなぁ……いやでも、泣いたのが丸わかりのこの顔で家に帰るのはちょっとなぁ……。変に心配かけちゃいそうだし。)


 どこかで時間を潰してから帰ろうかと考えたところで、
「あれっ、みっちゃん!」
 軽薄な呼びかけに足が止まった。


「あっ、山邑さんっ⁉︎」


 周囲を見回せば、ちょうどタクシーからハジメが降りてくるところだった。
 一瞬、雪成が一緒ではないかと心臓が縮んだが、ハジメ一人のようである。

 ホッとしつつ彼に近づいた。


「山邑さん、どこかお体の具合でも悪いんですか?」
「いやいや、ここに商工会議所の会頭さん入院してるから、そのお見舞いにね」
「ああ……!」


 ハジメの言葉に、美月も大きくうなずいた。




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