空の青はどこまでも蒼く
定時後、エントランスに先に到着していた有希を見つけた、と思った刹那、柱で隠れていた人物の後姿が目に入った。
有希はその男性と談笑している。
その後姿に見覚えがある。


昼間、エレベーターで一緒になったあの彼だ。
見間違うはずがない。
その後ろ姿は、エレベーターを降りて行く瞬間、私の目に焼き付いてしまったのだから。


有希が私に気付き、手を振る。
それと同時にゆっくりと振り返るその男性。
端正なその顔に、見惚れてしまった。



「亜美!」


有希にそう声を掛けられ、ゆっくりと歩み寄る。
昼間、どうして私に声を掛けたのか、その真相はわからないが、その彼が、今目の前に居る彼だと言うことは間違いない。
怪訝そうに彼を見つめれば、有希が彼を紹介して来た。



「この子ね、営業部の山野将樹君。」
「はじめまして、石田さん。」


そう言って、その端正な顔を緩め、営業スマイルさながらの微笑を私に投げかけた。


「はじめまして・・・」
「どうしたの?亜美。もしかして、山野君があんまりカッコいいから見惚れちゃった?」
「えっ!あぁ、そうそう。そうだね・・・」
「え・・・どうした?亜美。大丈夫?」


その綺麗な顔に見惚れてたのは本当だけど、どうして昼間、エレベーターの中で、あんなことを言われた日に、また会うだなんて。
思ってもいなかったから、正直、驚いた。
驚いて、声が出なかった。


「ごめんね、山野君。亜美、昨日、彼に振られて、ちょっとおかしいのよ。」
「ちょっ!!有希っ!!何言うのよ!」
「別れたんですか?彼と。」
「えぇ、そうよ。そうだけど、何か?」


言葉の最後の方はキツくなってた。
彼が悪いわけじゃないのに。
それなのに、八つ当たりしてしまう。


「別に。」


別にって何よ!別にって。
じゃ、聞かなきゃいいじゃん。


そう思ってたら、有希が、


「山野君も今から一緒にどう・「ちょっ!!!」


彼を誘った。


「今日は遠慮しときますよ。石田さん、機嫌悪そうだし。」
「そういう訳じゃないわよ。けど、今、会ったばかりじゃない。」


「そうでもないですけどね。」



最後に呟いた言葉は私の耳には届いてなかった。



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