空の青はどこまでも蒼く
10
目を覚ました私の視界に入ったのは真っ白な天井だった。
薬品の匂いが自棄に鼻に付く。
腕を見て、ここが病院だとわかった。
左腕に刺さった点滴。


あー、私倒れたんだ。
もう何週間もろくな食事をしてなかった。
喉を何も通らない。


そう原因は・・・山野君。


彼から近づいて来て、私の心を鷲掴みにして、私の心を持って行って。
それなのに、私が彼に溺れた時には、もう彼は居なかった。
私の傍には居なかった。


彼は何のために私に近づいたんだろう?
やっぱりただ私を揶揄っただけなんだろうか?


私が石田さんなのも、帰国子女なのも、ミス皇華なのも、元カレと別れたことも。
全部調べればわかることだ。


私が勝手に舞い上がり、一人のめり込んで行っただけなんだ。


温かい雫が私の頬を伝った。




「亜美・・・・・」
「お母さん・・・」


頬と伝う涙を拭い、母を迎え入れる。


「ごめんね、心配掛けた。有希も、ごめんね。ありがと。」
「大丈夫なの?」
「うん、ちょっと調子が悪くて御飯食べれなくって。」
「そう・・・・・」


母は有希から何か聞いたんだろうか?
何も私に聞いて来ない。


「亜美、家の鍵、くれる?必要な物、取って来てあげる。」
「え?どうして?」
「暫く入院ですって。」
「そんなに悪いの?私?」
「そうじゃないけど、一応ね。体力付くまで入院ですって。」
「ごめんね、お母さん。迷惑掛けて。」


ううん、と母は首を横に振り、病室を出て行った。
残された有希がベッド横のスツールに腰を掛ける。


「びっくりしたよ。ほんとに。」
「うん・・・ごめんね・・・」
「うん・・・・・」


きっと有希は言いたいこと、たくさんあるんだと思う。
けど、何も聞かないで、ただ私の横に付いていてくれた。
ただそこに有希が居ただけで、私の心は落ち着いた。

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