永すぎた春に終止符を
「ちょっと席を外す」
保田さんが気を利かせてくれた。
看護師さんに押さえつけられ、今度騒いだら、見舞い客には帰ってもらうからと念を押されて、私はベッドに寝かされた。本当に、帰ってもらいますよと看護師さんも釘を刺して部屋を出ていった。
「大丈夫なのか?」
「大丈夫なわけないじゃない。こんな姿でいきなり現れて」
悔しくて涙が出てきた。
「もう、泣くなって。いくら怒っても、俺は、もう大学を辞めちゃったぞ」
「どうしてそんな勝手なことしたのよ」
「おい、忘れたのか?君は俺がどこで何をしようと関係ないんじゃなかったのか?」
「大学を辞める以外は、そうよ」
「何言ってるんだ?本気で別れるつもりなら、そこまで俺のこと心配しないだろう?」
「心配するに決まってるでしょ?付き合い長いんだから」
「仕方ないだろ?そうしないと、梨沙が離れていくと思ったから」
「拓海、あなたは、大事な将来を、たかが女の為に棒に振ろうとしてるのよ。お願いだから、もう一度考え直して」
「何度も考えたさ。でも、何度考えても、梨沙以上に大切なものなんてなかった」
「そんなの、思い過ごしだって。もう一度考えて。別れて苦しいと思うのは一瞬だけじゃないの。失恋なんてすぐに癒える」
「梨沙はそうでも、俺はそうじゃない。梨沙が出て行ってから何していいかわからなかった。今やってることも、これからやろうとしてることも、梨沙がいないと何の意味もない」
「そんなの、一瞬で…ちょっと、拓海?」
拓海のやわらかい、唇の感触がした。
「そんなに元気にしゃべれるなら、キスくらい平気だろ?」
「何するのよ!」
「酷い傷だな。痛かっただろう」
彼は、指で私の顔を撫でる。
「痛いから止めて」