さくら色した君が好き
雪が降る

4月の中旬。

都会はもう葉桜で
気温は20℃らしいけど
私の住んでる街は
朝から雪だった。

「ないわー!」

なんてこったい!
買ったばかりのパーカーを着て
チャリで学校へ行こうと思ってたのに。

「何が無いの?」
食卓テーブルでご飯を食べてるお父さんに、私の叫びを聞かれてしまった。
町の図書館で働いてる、優しくて穏やかで癒し系のお父さん。

その向い側で小首を傾げる妹の胡桃(くるみ)
背中に流れる綺麗な黒い髪
どことなく儚げで品のある、お人形さんみたいな双子の妹。
双子格差。
身体が弱くて
細くて綺麗な妹を見ながら
これがテレビでよく言う『格差』ってやつなのかなーって思ったりして

いや
そんな事はどうでもいい。

雪がショック。
でも溶けるよね。
すぐ溶けるよね。
白のパーカーはガマンして
チャリはイケそうだなぁ。

「あんたの自転車はスタッドレスタイヤ装着か?」
私の頭の中を覗いたように
お母さんが台所から大きな声を出す。

お母さんスゴっ!
私の頭の中が見えたのか。
驚く私の顔を見て
「あんたの考えなんて見えてる。ほら早く食べなさい」って釘を刺されてしまった。
パーカーは汚れたらショックだからガマンするとして
チャリは大丈夫だと思うけどなー。

「チャリは乗りたい」

「道路が凍ったら危ない」

「でも乗りたい」

負けない私に「好きにしなさい」ってお母さんは言う。

うぃーっす。勝利!
でもパーカー着たかったなぁ。
ちょっと悲しい。

「明日は晴れるよ」
気の毒そうに優しい声でお父さんが言ってくれるけど、うなずく元気もありませんわ。

テレビでは
気象予報士の清水さんが雪だるまのかぶりものをして、アシスタントの愛華ちゃんと大通りビッセ前でミニコントをしている。

平和だ。
てか札幌行きたい。 
でも遠い。








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