常務の秘密が知りたくて…
｢少しだけ、眠ってもかまいませんか？｣

｢最初からそう言ってるだろ。少し眠ってろ｣

｢でも常務だって……｣

｢俺のことは気にしなくていい｣

　強い口調で言われたが、常務が近くにいるのを感じてそのことにひどく安心する。だからか

｢眠るまで、傍にいてもらってもいいいですか？｣

　自然とその言葉を口にして、私は常務は女性の寝顔が嫌いなことを思い出した。それではなくたって常務にお願いするようなことではない。

｢すみません、私｣

　急いで訂正しようとすると。頭に温もりを感じた。常務の手が置かれたのだと理解すると同時に顔が赤くなる。

｢ちゃんと傍にいるから、今は余計なことを考えずに眠れ｣

　そのまま頭を撫でられて、申し訳ないような嬉しいような複雑な気分になった。

　私はどこかで自惚れていた。今までの秘書たちとタイプの違う自分が選ばれて、そういう関係になることもなく常務に優しくされて、傍にいられて。でもそれは全部誰かの代わりだったのかもしれない。

　それでも今こうして優しくしてもらえるのは私がその人と似ているからとかそんな理由じゃないって信じたい。相変わらず仏頂面の常務だけど触れてくれる手の温もりは優しくて、目を閉じると一筋の涙が私の頬を滑った。
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