継恋
Taxiの運転手に書類の住所を告げた。
祖父が遺した土地がどんな場所か想像が出来なかったし。
俺には、他人の日記を読む趣味はなかった。
笑美花が言うような宝の地図とは明らかに違った。
「着きましたよ。」
色んな事を考えてた俺にTaxiの運転手は、目的地に着いた事を知らせた。
窓の外に視線を移した俺は一瞬時が止まった。
その場所を訪れるのは、本日二回目だった。
「あのここで間違いないんですか?」
俺は運転手を疑う訳ではないがあまりの出来事に確認したが、Taxiの運転手に
「えぇ…この先の丘で間違いないですよ。」
とあっさり肯定された。
その場所は、俺の思い出のお気に入りの場所だった。
Taxiを降りて少し前に来た道を歩きだす。
頭の中は、大分混乱していた。
確かに誰かの私有地とは、知っていたがまさか祖父が所有していたなんて考えもしなかったし、それに何でこんな場所を所有していたか検討もつかない。
やがて丘の頂上にたどり着く。
俺は、とりあえずあの桜の木の下に腰を降ろした。
急に強い風が俺を襲った。
ビックリした俺は手に握り締めた祖父の日記を離した。
地面に落とした日記を拾うと手を伸ばすと、落ちた衝撃でランダムに開かれたページの中の思いがけない文章に目を奪われた。
「我が最愛の子継人、美咲。二人の幸せをただ願うばかりだ。」
自分の目を疑ったが確かにページの一部に書かれたその文章は紛れもない現実だった。
俺は、言葉に出来ない感情に包まれた。
例えるなら出口が見えない真っ暗なトンネルの様な感じだ。
そのトンネルの出口に例え辿りついてもその先に光広がる世界があるとは想像出来ない程、暗いトンネルだ。
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