初恋ブレッド
始業開始と同時に、白坂先輩と会議の準備を始める。

会議室に昨日作った報告書と資料の束を並べ、すぐ使えるようにホワイトボードやプロジェクターをセット。

私達の仕事はここまでで、あとは社長や部長達の会議。


オフィスに戻るとすぐに、先輩はデスクの上に化粧品を広げた。
仕事しないのかな?という驚きと、どんな化粧品使っているのかな?という興味でつい凝視。

「部長達いないと楽よね」
「そういえば、宮内部長彼女いないって!理子ファイト~」
「別にいてもいなくても関係ないし……」
「でも宮内部長は二股とかしなそうじゃない?」
「うん。だけど誰にでも優しいから、そこが狙い目なのよ」
「理子怖いから。私はイイ人すぎて辛いかなぁ」

恒例、総務部の噂話も始まった。

宮内部長、本当に良い人。
恋人を裏切ったりしないだろうな。
うんうんと頷いていると白坂先輩にバインダーを渡される。

「田代さん、暇なら倉庫の備品チェックよろしく。数えるだけだから一人でできるわよね」
「あっはい、わかりました」



倉庫、寒いんだよなぁ。

オフィスと工場の間にある倉庫というか物置部屋は、人目につかず薄気味悪くてやけに寒い。
ギギッと重い扉を開けると、中の冷気で体の芯がぶるりと震えた。

「ちゃちゃっとやって戻ろ……」

カーディガンの袖で冷えてきた手を隠す。
前に一度、項目ごとにチェックを入れ、足りない物は後で業者さんに発注するとだけ聞いていた。
使われていないデスクや会議用テーブルを避けながら、薄暗い電気の下で書き込んでいった。
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