君の横顔

◆友哉side



息をするたび苦しそうに上下する、歩の薄い胸。

白い掛け布団から出ている、点滴の刺さった細い腕。

空気に溶けてしまいそうな、儚げな寝顔。

ただ側に座って、じっと見つめていることしかできない。

……俺は、なんて無力なんだろう。

俺が無理させたせいで、歩を苦しめてしまった。

ずっと…守りたいと思っていたのに……。
外野でいつもスケッチしてるのが歩だってこと、本当は俺、知ってたんだ。

ずっと話しかけたいと思ってたけど、チャンスがなくて。

監督に『グラウンドの外を走って来い』って言われた時、チャンスだと思った。

フェンスの外に出る時に、歩に声をかけることができるって思った。

ただ話すきっかけが欲しいだけだった。

なのに、なんで一緒に走ろうなんて言っちゃったんだろう。

歩が病弱だってことも、もちろん知ってたのに。

だって俺、小学2年の頃から、ずっとあいつのこと見守ってきたんだぜ。

そりゃ、最初こそ『かわいい女の子が悪ガキにいじめられてる』って誤解して、夢中で助けようとしたんだけどさ。

でも、男だってわかってからも、あいつを守りたいって気持ちは、全然変わらなかった。


中学になって、クラスや部活も違うようになって、接点がなくなっていっても、俺、いつも歩の姿を探してた。

放課後、夢中になって絵を描いてる歩の横顔が見たくて、美術室の窓を覗いたりもした。

歩をいじめる奴はいないか、変な欲を持った目で見てる奴はいないか、目を光らせていた。

もちろん全部、歩本人には知られないように。

そうやって見守っていられるのも中学までだと思ってたから、同じ高校を受験するって知った時、すごく嬉しかったんだ。

ほんと、夢なんじゃないかって思った。また3年間同じ学校に通えるなんて。

しかも同じクラスにまでなれて、めちゃくちゃ嬉しかった。またずっと見守っていられると思って。

なのに俺、自分でぶち壊しちまった。

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