女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~


 私に付き合ってくれる男は彼くらいだろう。それは判る。

 こんがらがって頭痛がしてきたから、取り合えず止めた。彼は出勤したのかな・・とぼんやり考えて、コーヒーを淹れに席を立った。


 休憩から戻る途中、鮮魚売り場の奥の厨房で働く彼を発見した。

 良かった。やっぱりいつもより遅いシフトだったんだ。

 こっちをみたら手を振ろうと視線をそっちにやったままだったけど、彼は売り場を横切る私には気付かず手を動かしていた。

 売り場に戻って、宣言通りにレジをオープンさせていた大野さんを褒めちぎり、ストック場へ行く。

 そろそろ消防の点検があるって言ってたな・・。倉庫、片付けないと、と考えながら商品を紙袋に入れていく。

 これと、あれ。それに、あれも。商品を入れた紙袋を持って、今度は鮮魚の前は通らずに自分の売り場に戻った。

 彼とは今晩会える。

 大野さんと話しながら、私は晩ご飯の献立を考えていた。


 の、に。

 彼は来なかった。

 百貨店が閉まる8時半を過ぎてからメールを受信し、今日も昨日の知人と会わなくてはならなくなったから行けないと、理由と謝りの内容だった。

「・・・ふうん」

 呟いて、携帯を閉じる。

 何か、釈然としないものを感じた。


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