明日の君に手を振って
明日の君に手を振って

吹く風が厳しい。
春先とはいえ、ここ数日はどうにも少し肌寒い。
三寒四温と言うけれど、これでもう、何度目かの暖かさと寒さを繰り返した。
これでもう、暖かくなってくれるなら。
そんなことを思いながら二人で公園を歩く。

開花宣言がされたと言えど、ここの辺りは満開にはまだほど遠く、揺れる木々の先、蕾や芽吹いたばかりの花たちは風に耐えている。
思えばちょうど一年前もこうやって二人で歩いた。

そして、そう。
夕焼けの時間の頃。
街が、公園が茜色に染まっていく。
ネオンで街がキラキラと輝くその前の、一瞬のトワイライトが好きだ。
あ、あの空の感じ、とても好き。
そうしているうちに歩調を緩めて、やがて立ち止まった。

周りの景色には覚えがある。
似たような道をずっと歩いていたけれど、わかる。
出会って2年、付き合い始めて1年。
1年前の今日、ちょうどまさに、ここで君に『好きだ』と、告白された。
頭の中で優しくリピートされたその声は、ブワッと吹いた風に掻き消された。
そして風が収まった頃に聞こえてきたのは大好きな君の残酷なことば。




「別れよう」




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