部長っ!話を聞いてください!

悔しいくらい良いところだったのに、ベッドから落ち、鼻を強打し、夢から醒めてしまった。


「もう一回寝たら、今の続き見れるかな。見たいなぁ」


恨めしげにベッドを見ると、ちょうど枕元にあるスマホのアラームがなり始めた。もう起きる時間らしい。

今日は平日。これから仕事。もちろん二度寝などできない。

私は立ち上がりながらスマホを掴み取り、鳴り続けているアラームを止めた。


「あとちょっとで部長の腕の中だったのに」


文句を言いながら、きっちり閉めてあるカーテンへと歩いていく。

ざっと小気味よい音を立てて勢いよくカーテンを開けると、真っ青で澄んだ空が見えた。

からりと窓を開け大きく伸びをすると、ふて腐れ気味だった気持ちが和らいでいった。

私はスマホを操作し、以前撮った写真を画面に呼び出す。

慰安旅行で撮ったそれに映っているのは、神崎部長とその他大勢。

見つめていると、だんだんと口元が緩んでいく。

宿の浴衣を身にまとった部長は、何度見ても色っぽい。


「……もう、部長っ!」


本当に色っぽい。

何でこんなにカッコいいんだろう。

夢も良いけど、やっぱり生身の部長に会いたい。


――……大好き。



「部長ーーーっ!」


スマホをぎゅっと抱きしめて、私は大きく叫んだのだった。







< 3 / 74 >

この作品をシェア

pagetop