もっと聞かせて うっとり酔わせて
「すごく赤いですね。今まで見たことがないほど地獄のように赤いです。」

「あっはっは。いちいち俺を笑わせないでくれ。」

「笑える場面ではありません。」

「あっはっは。その一言に笑えるんだ。」

瑠花は真顔で言い切る。

俺をこんなにも笑わせる女に出会えた運命と

自分ではコントロールできない方向へ引っ張られる力に

逆らえない自分に無意識に喜べた。

いちいち反論する瑠花を愛くるしいと感じ

腕に抱きしめたいと思っても

今朝初めて会ったばかりで

なにもかもが早すぎると考えた。

自分の気持ちだけが先を行き

まだ今を楽しめる余裕が少しでもあれば

それにしがみついていたかった。

「瑠花。」

「はい。」

律儀に返事をする彼女を自分のものにしたいという衝動で

俺の脳内は端から端まで埋まった。

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