イレカワリ~番外編~
一生許さない‐海side‐
沙耶の両親に連絡を取って戻って来ると、茫然と立ち尽くしている歩がいた。


俺は歩の横に立ち、電気ショックを受けている沙耶を見た。


沙耶は目を固く閉じたまま動かない。


「嘘だろ……」


俺の手からスマホが滑り、カツンッと冷たい音を立てて床に落ちた。


それを拾う気力もない。


鼻をすすりあげる音が聞こえてきて、俺は歩を見た。


歩は泣いていた。


俺と同じ顔をして、沙耶の前でグズグズと泣いていた。


「なんで……お前なんだよ……」


体の中が炎で燃えるのを感じた。


「なんでお前がここにいるんだよ!」


思わずそう怒鳴り、歩の顔を殴りつけていた。


同じ顔の人間が沙耶の前で泣いているのが許せなかった。


俺は沙耶の病気が悪くなってから、沙耶の前では泣かないと決めていたんだ。


ずっと笑っていてほしい。


だから俺もずっと笑っていようと。


「泣いてんじゃねぇよ!!」


そう言う俺の視界も徐々に滲んできはじめた。


俺はグッと下唇を噛みしめて涙を押し込める。


「ごめ……っ」


歩はその場に崩れるようにして座り込んだ。


「18時30分。ご臨終です」


担当医の冷たい言葉が病室に響いた……。
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