イレカワリ~番外編~
喧嘩-海side-
歩のクラスの転校生と顔を合わす事なく、数週間が経過していた。


二学期の授業も始まり、またいつもの日常生活に戻って行く。


夏休みが遠い昔に感じられるくらいに、毎日は待ってくれないようだ。


朝起きてすぐ、俺はカレンダーを見ていた。


9月15日の日付に赤いペンで丸をして、その下に『沙耶誕生日!』と、書いてある。


毎年沙耶の誕生日を忘れないようにこうしているのだ。


「もうすぐだな」


俺はその日付を指でなぞって呟いた。


沙耶の誕生日にはいつもちょっとしたサプライズパーティーをしている。


でも、今年の誕生日は病院で過ごす事になりそうだ。


院内で賑やかなパーティーができるかどうか、わからなかった。


パーティーができなかったとしても、プレゼントはちゃんとしたものを送りたい。


だけど、ほぼ毎日のお見舞いで俺の財布は限界が近かった。


となると……。


俺は手早く着替えをして部屋を出た。


それとほぼ同時に歩の部屋のドアも開く。


「なぁ、歩、今年の15日はどうする?」


俺はすぐにそう聞いた。


俺が金欠でも、歩がいる。


毎年一緒にパーティーを考えていたから、嫌な顔はしないハズだった。


しかし……。


歩はキョトンとした表情を浮かべて「15日?」と、聞いて来たのだ。


「あぁ。沙耶の誕生日」


俺がそう言うと、歩は少し考えてそれからハッとしたように顔を上げた。
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