アナタに勝てない

「これで・・・いい?」



色とりどりの紙ふぶきが舞う中でガッツポーズのキャラクターと
New Recordの文字がピカピカ点滅してる画面。



「・・・いいけど、良くない」
「何だよ?それ」
「新記録まで出せなんて言ってない」
「仕方ないよ。出ちゃったんだし」
「さっきのシューティングも勝てなかった」
「俺の動体視力は異常なほどいいから」
「RPGだってすぐダンジョンクリアしちゃうでしょ」
「ちょっとしたコツだよ。回数こなせば分かるって」



知佳はさっきまで俺が抱いていたクッションをひったくると
今度は彼女がそれを抱え込んで拗ねて脹れた頬を埋めた。



「オムライスの卵だって上手に半熟にできるし」
「え?」


急に変わった話の矛先に一瞬戸惑ってしまう。
スマッシュが来ると思ってたのに、ネット際にちょんと軽く落とされた時みたいだ。
でもこんな予想外の攻撃に怯んでいるようじゃエースの名が廃る。


「知佳のロールキャベツには敵わないよ」と上手く交わして次への体制を整えた。


別におだてだのでもなくお世辞でもなく彼女のそれは本当に美味い。
あぁ思い出したら食べたくなってきた。今夜の夕食に作ってもらおう。
そうと決めたら早く機嫌を直してもらわないと!
さあ頑張れ、俺。


「ボーリングだってターキーなんて私一生出せない」
「あれは運がよかっただけ」
「じゃんけんも一度も勝ったことないもの」
「ホント俺ってラッキーだよね」
「テニスだって勝てないし」
「まぁ一応これでも全日本ジュニア選抜だったからねぇ」



「何をやっても順平クンに勝てないんだもの」
「そんな事ないよ」
「ちょっと悔しいの」



「私の方が年上なのに」なんてしょげてるのかむくれてるのか分からない背中に
「ゲームやボーリングの勝敗に年上も年下も関係ないと思うよ」と
かけた言葉はやっぱり慰めにはならなかったらしい。


「ほっといて!」の声とクッションが飛んできた。
大体そんなんで勝とうが負けようが大した事じゃないのに
俺のお姫様はどうだっていい事にでも、とっても拘る自称「負けず嫌い」だ。
そこがまた可愛いって言えば可愛いんだけど、ちょーっと面倒くさいともいえる・・・かな?


「痛ってぇ~」
「痛くない!」
「ひっでぇなぁ。当たったの、顔だよ?ボムって音したよ?」
「知らないっ」


きっとこれで次に会う週末までの平日の夜は
大好きなドラマも見ないで、食事や飲みに行くお誘いも断って
徹底的にゲームをやり込むに違いない。そして再度勝負を挑んでくるはず。
知佳は絶対ギャンブルには手を出さない方がいいタイプだとつくづく思う。
全財産つぎ込みかねない。



「あーあもーぅ」って手足バタバタさせてる知佳の姿なんて
普段の大人っぽい彼女からはちょっと想像がつかない。
まるで思うようにならなくて癇癪を起こしてる子供そのもの。
なんか可笑しくて・・・可愛い。
歌の文句じゃないけれど胸の奥のやらかい場所ってやつを ぎゅっと捕まれてしまう。




「知佳。こっちむいて」
「い・や」




ねぇ知佳。もしも君に恋敵が現れたとしたら
僕の為にその負けず嫌いを発揮してくれる?




「しようが無いなぁ」




膝とクッションを抱えて座っている彼女の背中から
すっぽりと包み込むように抱きしめて
首筋にかかる髪を除けてうなじにキスをしたら
「や」と肩を竦めて小さく声があがった。



「悔しいのは俺の方だよ。何よりも君を優先させたくなるんだから」



耳元に囁いた唇で首筋を辿り背筋にキスを落とせば
彼女の声にならない吐息が漏れた。
早く機嫌を直して欲しくて知佳の敏感なところを刺激する。
子供みたいに拗ねててもそれを宥めるのに使う手段が
多少艶めいてしまうのはオトナの特権。



「仕事よりも?」



俺の髪を指で乱しながら、甘えるように少しだけ上がった語尾に
込み上げてくる愛しさに任せてしたキスは
今日初めてにしてはちょっとホットだったかもしれない。



「とーぜん。いつだって辞めちゃうよ?で、君の下僕になる」
「それはダメ」と俺の胸元でクスクス笑い出す知佳は
いつものオネエサンぶる時の顔。あぁ俺、すごく好きなんだよね。こういう知佳も。
もう一度深く強く抱きしめて今度は優しく触れるだけのキスを何度もして
彼女の額に額を当てた。



「どうして?そうしたらいつも知佳の傍に居られるのに」
「でもそれじゃ順平クンが困るかもよ?」



さりげなく本音を混ぜて甘えてみたのに、否定とも肯定ともいえない台詞で
するりと交わされる。こうなると結局最後は
「困るわけないよ。寝ても覚めても君の事ばかり考えてるのに」と
今日もまた余裕無く本心を言わされてしまう。
それなのに俺に勝てないなんて言わせない。




「俺の全ては君のものだよ。俺の全てで君を愛してる」
「そんな事さらっと言えちゃうんだもん。やっぱり順平クンには勝てない」と
照れてそっぽを向いた彼女のほのかに紅く染まった頬に
ちゅっ、とキスしてぎゅっと抱きしめた。



「知佳、かーわいい」
「可愛くなんかない」




からかわないで、と睨んで拗ねたって・・・ほらね。やっぱり可愛くて
どうしようもないほど愛しい、なんて思わせる知佳の勝ち。
より多く愛した俺の負けなんだという事を今から教えてあげるよ。



end
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