【企画】海のあるここで
コウは女の子と馴れ合うタイプの男の子じゃなかった。
私以外の女の子には笑いかけたところなんて、今まで見たことなかったのに。
なのにあの子とは、仲が良さそう。
「……みなみ?」
名前を呼ばれて自分が下を向いていたことに気がつく。
会いたかったコウがいる……。
すぐそこに。目の前に。
なのに、今すごく泣きそうーー。
「えへっ、コウに会いたくて来ちゃった!」
「はあ?」
「い、いーじゃん別に!コウが構ってくれんから私がこうやって……」
「アホか!俺は遊ぶためにここにおるんじゃないっちゃけん!」
「……っ……」
「冷やかしなら帰れ」
コウの怒った表情と、言葉にのどが痛くなる。
なんで?
なんでそげんこと言うと?
……コウは。
「……コウは、なんもわかってくれんね」
我慢していたはずの涙はいつの間にか私の頬を伝う。