イジワル同期とスイートライフ
「も、もういいよ、ごめん、無理に」

「もういいってなんだよ」

「ごめんね、帰る」

「おい、ちょっと待て」



ベッドを下りようとして、上に乗った久住くんにあっさり阻まれ、引き戻された。

視線に耐えられず、顔をそむける。



「無理にってどういうことだよ」

「だって、だって変だもん、久住くん、なにか…他人行儀みたいな」



言っていて、違和感の正体に気がついた。

この間もかすかに感じた、よそよそしさ。

腫れ物みたいに扱われる感覚。


久住くんが困惑している。



「別に、そんなこと…」

「押しかけてごめんね、帰らせて」

「お前、泣いてんの?」



とっさに顔を隠そうとしたけれど、それより早く手首を掴んで封じられた。



「なんなの? 変なのはお前のほうじゃん」



わかってるよ、だからごめんって。

お願いだから帰らせて。



「泣いてもわかんねーよ、なんかあるなら話せ」



ぽろぽろと涙がシーツに落ちる。

それをすくい取るように頬をなでて、久住くんは小さな子にするみたいな、優しさのこもったキスをくれた。

そういうのやめて、困る。



「話す?」



手首を取られたまま、必死に首を振る。

ため息が降ってきた。



「じゃあ、仕方ないよな」

「えっ…」

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