イジワル同期とスイートライフ
「それじゃ俺とも切れねーじゃん」

「あんたが六条さんに失礼なことしないか見てるよ。もしやったら、この会社で生きてけないようにしてやるからね」

「怖えよ…」



彼女の迫力に押され、久住くんが小声でつぶやいた。





「想像を超えてた」

「だから、昔の話だって」

「人がそんなに変わるものかな」

「変わるんじゃないか? 澄ましてた誰かさんが俺にすがって泣くくらいには」



スーツの背中を叩いた。

花香さんと別れ、会社に戻る途中、ふと空を見上げると、もう冬の色だった。

白っぽく光る青に、目の奥が痛む。



「でもさあ、別に俺、緊張したことなかったぜ」

「え?」

「あいつといたときさ。ていうか、お前以外、そんなん感じたことない」



両手をポケットに入れて、ちょっとうつむいて歩く。

ふてくされた子供みたいな姿が、笑いを誘った。



「なにかおかしいか」

「ううん、続きをどうぞ」



知らんぷりして促すと、不本意そうなふくれっ面になる。



「続きなんかねえよ」

「あら、そうなんだ、残念」

「なんだ、偉そうに」

「ねえねえ」



つれない腕をつついてみる。



「なに」

「ちょっと乃梨子って呼んでみて」



ぎょっとこちらを見た顔が、だんだんと赤くなった。



「…今は…無理だろ」



必死な感じで言うので、こらえきれず声を出して笑った。

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