愛しのカレはV(ヴィジュアル)系
ファンの子達が、メンバーと写真を撮るのを待ってたら、なんだか眠くなってきた。
カシスソーダがまわって来たのかな?
あくびを噛み殺しながら、しばらく待ってると、ようやくさゆみの順番になって…



「リクさん、さっきはどうもありがとうございました。
今度はCDにサインお願いします!」

「OK!」

「あ、さゆみへって入れて下さいね。
ひらがなで『さゆみ』です。」

「了解。ひらがなでさゆみ…と。」

リクさんは、さらさらとCDにサインをした。



「あれ?ヅラ子は、CDないの?」

「えっ!?」

顔を上げたリクさんが急にそんなことを言うから、私はなんだか焦ってしまった。
っていうか…また「ヅラ子」って言った!!



「あ、この子、今日がCLOWNのライブ初めてなんです。」

「へぇ、そうなんだ…
向井…CDあったよな?」

「あぁ…」

マネージャーさんかなにかわからないけど、メンバーと同じテーブルにいた人が、大きなかばんの中からCDを一枚取り出して、リクさんに手渡した。



「ヅラ子へ…と。」

リクさんは、そのCDにサインをして、私の前に差し出した。
周りにいたファンの子達から「いいなぁ…」って言う声が聞こえた。



「え……」

「新規のファンには優しくしとかなきゃね。」

「え……」

私は素直に受け取ってしまったけど…
わっ!「ヅラ子へ」って書いてある…
CDは嬉しいけど、何なのよこれ!



「良かったじゃん、璃愛!」

「え…う、うん…」
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