人間嫌いの小説家の嘘と本当

Moon Night Wedding


目が覚めると、鬼の様に目を吊り上げた櫻井さんの顔が視界に入り飛び起きた。

慌てて侑李を揺すり起こすも、なかなか起きず、普段の寝起きの悪さが、ここでも発揮される始末。



「侑李様、蒼井様。さっさとお着替えください!!」



我慢の限界と言わんばかりに、櫻井さんは顔を真っ赤にして怒号した。



「は、はい。すみません!!」



稀に見ない櫻井さんの怒りっぷりに、シーツを胸に当てたままベッドから窓辺側に這い出す。

侑李はと言うと、ようやく起き上がり目を擦りながら欠伸をしている。
まったく、呑気なんだから。



「煩いぞ、櫻井」



侑李は欠伸を繰り返し、ゆっくりとした動きでシャツに腕を通していく。

そんな彼に文句を言いながらも、櫻井さんは下着やズボンを手渡していくなど、甲斐甲斐しく世話を焼いている。


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