シークレットポイズン
一応女子なのだから
* * *

(…藤澤さんという人間がわからない。)

 わからないことまみれだ。わからなすぎて深山に相談もできない。
 夏休みは美樹、藤澤、深山、西嶋の4人で花火をしたり、西嶋を除いた3人で飲みに行ったりと数回遊んだ。遊ぶために連絡を取り合う必要はわかる。それについては理解を示せるが、今の美樹には一つ理解できないことがある。

(…同じ職場で、毎日顔を合わせるというのに、毎日連絡を取り合う意味はどこにあるんだ。)

 夏休みが明けて、まだ秋らしい気候にもならない9月の頭。ほとんど毎日続く連絡に、美樹は頭を悩ませていた。

(…いや待て、この男にきっとそんな深い考えがあるわけがない。ないんだよ。…ないよね?)

 今日はどこ行っただとかこれから飲みに行くとか。一日一回程度の連絡。そんなの全部、美樹にはどうでもいいことばかりだ。

(…何度、『私はお前の彼女か』と心の中で叫んだことか。)

 実際彼女じゃない。というか、藤澤には好きな子がいるという話だった。それがどんな子なのか、美樹は知らない。知る予定もない。恋愛絡みの話なんてしたこともない。
 しかし、今日も今日とて先に帰る美樹に連絡が来るのである。

― ― ― ― ―

仕事お疲れ様です!今バス乗りました!

― ― ― ― ―

お疲れー!今日もラスト?

― ― ― ― ―

ラストっす!


(いやーその報告いらないよね!?)

 心の中では毎度のことながらそんなことを思っていても律儀に返事をしてしまう。それが自分という女なのだということをよく知っている。

― ― ― ― ―

そういえば、もうすぐ深山さんの誕生日だから計画を立てようと思うんだけど。さすがに学校で話し合ってたらバレると思うんだよね。

― ― ― ― ―

じゃあ、飲みにでも行きますか。

― ― ― ― ―

行くか。そんで相談しよー。

 来る土曜日の夜、藤澤とのサシ飲みが決まった。
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