mariage

目の前には、仕事を終えた秀吾が立っていて、私は苦笑いを浮かべるしかなかった

「…仕事は程々でいい。帰るぞ」
「…はぃ」

二人で下へ降りようとした時だった。秀吾の携帯が鳴り、秀吾はそれに出る前に、溜息をついて、私に先に駐車場に行くよう促すと、社長室に戻って行った。

仕事の電話だろうか？

私は言われた通り、一階へと降りたものの、忘れ物に気づいて、慌てて秘書室に向う。

「…ぁ、あった、あった」

忘れ物を取ると、秘書室から社長室に通じるドアが少しだけ開いていて、中から、秀吾の声。

まだ、電話中なのかと思いながら、また、下へ降りようとすると、秀吾とは別の澄んだ女性の声が聞こえた。

「…結婚ごっこなんて、いつまで続けるつもり？」

…ぇ、結婚ごっこ？何それ？