悪いキス


「図に乗りすぎ、画ビョウくらい踏んでればいいのよ…なんてもっと醜いセリフ言えないのかしら。ちゃちいわね」

泣くに泣けなくて頭が真っ白なまま呆然と立ち尽くしていたら
ゆりえの声がした

「これ、あたしの上履き。23.5センチ」

「……………」

「なにメソメソしてんの。あんなガキみたいなこと言われて傷ついてる、とか言わないでよね」

「……………」

「何やってんの、早くはきなさいよ。サイズくらい少々気にしないで履きな。あ、水虫じゃないから安心して」

「…ぶっ」

わたしはゆりえの最後の一言で笑ってしまった

「やっぱりその顔だよ、きっとその笑顔に桑原くんも惚れたのね」

「……………」

「もっと強かになりなさいよ、桑原くんの彼女でいたいんでしょ?これくらいなんでもないって胸はっときな」

「…!ありがとう」

23.5センチ

わたしとぴったりなサイズだ

「また過去が繰り返されるんじゃないかって怯えてしまったよ」

「大丈夫、きっと桑原くんが助けてくれるから」

そう言ってゆりえはその場を立ち去った


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