白衣とエプロン 恋は診療時間外に
ちなみに、この更衣室は女性専用で男性用はない。

麗華先生以外のドクターには個人用のロッカーもなく、男性はスタッフルームの隅にあるハンガーラックを使っている。

まあ、先生方は上着を脱いで白衣を羽織るだけだし。

とくに支障はないらしい。


「あら? 今日は麗華先生の相棒、保坂先生じゃないのね」


着替えを終えた唐木さんがシフト表を見ながら言った。

うちのクリニックは医師二名がそれぞれ診療にあたる二診制をとっていて、四人のドクターがシフトを組んでまわしている。

そして、土曜はいつも麗華先生と保坂先生の二人が勤務に入っているのだ。


「保坂先生、今日はお休みで次の勤務は連休明けの来週土曜みたいですよ」


「そうなんだ? で、午前が桑野先生で、午後が貴志先生か」


シフト表を読み上げながら、唐木さんは苦笑いした。


「あの二人、土曜出勤キライなのよねぇ。どっちが出るか折り合いがつかなくて折半することになったのかしらねぇ」

「えー、まさかそんな」


と言いながら、あながちハズレではないとも思う。


土曜が休めれば土日で二連休だもの。よそのクリニックは「土曜の診療は午前のみ」というところもあるけど、うちは午後もやってる。


桑野先生と貴志先生が土曜は出たくないという気持ちもわからなくはない。


だからって、保坂先生ばかりにお鉢がまわってくるはいかがなものか?


こういうところでも、やっぱり保坂先生は損をしているなって思う。


もっとも、先生自身は「そんなことはない」と言うのだろうけど。
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