白衣とエプロン 恋は診療時間外に
なんだろう、質問のしかたにちょっと違和感があるような?

でも、まあいいか。


「大丈夫というか、猫は大好きですよ」

「アレルギーなどはありませんか?」

「ありませんけど……?」

「それはよかった」

「はい?」


なんだか問診されてるみたいなんだけど、先生何を……?


「言い忘れていましたが、うちには猫がいまして」

「ええっ!」


うそ!うそ!!うそーっ!!!

どうしようっ、嬉しすぎるんですけどっ!!


「先生、猫ちゃん飼ってるんですか!?」

「えっ、まあ……」


先生は尋常じゃない私の食いつきっぷりに若干引きつつ、なんだか歯切れの悪い説明を始めた。


「預かっていたというか、譲り受けたというか……僕が筆頭飼い主として面倒をみています、一応」

「そうなんですね」


どうやら何か複雑な事情があるようだけど、とりあえず今は聞くのはよしておこう。

それにしても――保坂先生が猫を飼ってるって!筆頭飼い主だって!

“猫を飼っている人に悪い人はいない”なーんて話を聞いたことがあるけど本当かも。

保坂先生って、道端で段ボールに入った捨て猫なんかに遭遇したら、絶対に放っておけないんだろうな。

お家で飼える見込みがあってもなくても、連れて帰っちゃうんだろうな、きっと。

私は勝手に想像した。

“可愛がって下さい”と書かれた猫入り(?)の段ボールと、それを抱える保坂先生の姿を。

ちなみに、大事にそうに段ボール箱を抱える保坂先生はいつもの無表情だったりして。

ふと気がつくと、心の中の不安や緊張がずいぶん和らいでいた。

そんな私を見て先生はぽつりと言った。


「本当によかった」

「え?」

「清水さんが猫好きで」


決して表情豊かではないけれど、先生の横顔は優しくてどこか嬉しそうだった。

まだ見ぬ猫ちゃんのことを考えると、すごくワクワクする。

先生、今夜だけもう一匹増えてもよろしいでしょうか?

私はちっとも可愛くないし面白味もないやつですが、どうか――可愛がって下さい。

保坂家の皆様に(?)そんな願いを抱きつつ、私は先生と並んで静かな夜道を歩いていった。



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