花の鎖・蝶の棘




確か、仕事帰りに偶に行くバーに寄って駆けつけ一杯目にビール。
それからおつまみ頼んで、ビール、ビール。
バーテンの女の子が美味しいチーズ仕入れたとか何とか言って、チーズをあてにワイン一本空にして……


良い感じになった頃、隣に座ってた年配の社長風の男性に高価なブランデーをご馳走して貰ったら妙にテンション上がって、更に飲んで。

見かねたマスターがタクシー呼んでくれて、フラフラになりながらなんとなく自分の住むマンションに着いた事までは思い出せた。



そこからの記憶が曖昧だ。と言うか、うっすらとした記憶があるのだけれどどうも自分では信じ難い。


酔っていたせいか。いつもはエレベーターを使うのに、その日に限って私は階段を上っていたように思う。深夜のマンションの階段はやけに静かで、ヒールの音だけが響いて……上りきったところでヒールが、




折れた。



そのままーー







「お、落ち……た?」



多分。あまりにも情けない。はっきりとはわからないけど、恐らくそうだった。


って事は此処は診療所か何か?
誰かが落ちて倒れていた私を運んでくれたのだろうか?
顔から火が出そうなくらいの醜態を晒したわけなのだが。
布団の中で悶えていても仕方がない。


とにかく、医者でも看護師さんにでも会って話しを聞かなければ。


そう思い布団から起き上がり部屋の外へ出た。


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