これも恋と呼んでいいのか
本当に手掛かりなく、困り果てた琉ヶ嵜は、古い知り合いのいる関西にある古書店を訪ねてみた。
「これは…相当古いもんやな。そこらにはないで」
白髪頭で、でっぶりと太った店主の白井が、首から下げた老眼鏡をかけ、まじまじとメモの字を見る。
この店を始めて20年になる。
出来た当初からよく通い、勉強させてもらった。
「分かるんですか?」
「多分、あれのことやないかなあって、思い当たる節がひとつ」
改めて、メモを清書してもらう。
「版元自体が、とうになくなってるはずやで」
「えっ?そんなに!?」
困った。
「あれ?その本、この前どっかで…」
接客が終わってカウンターに戻ってきた、琉ヶ嵜より少し若い店員の黒坂が、店主の背後から覗き込んだ。
「見たのか!?」
座っていた椅子から思わず立ち上がる琉ヶ嵜。
「えーっと…あれは」