強引なキスで酔わせて【完結】~二人のその後 更新中
自室前の
マンションの前、エントランスにも奏汰の姿はなかった。


当たり前か。
一晩中、こんなとこで待っているわけもないか。


エレベーターに乗り、自室を目指す。
エレベーターを降り、角を曲がった先に、私の部屋の前で蹲る、一人の男の姿が見えた。



「奏汰・・・・・」



私の声に奏汰が顔を上げる。
その顔は、怒りに満ちていた。



「楓・・・・・どこ行ってたの?」



私は、その奏汰の問いに答えもせず、奏汰の横を通り過ぎ、部屋の前まで躍り出る。


「楓っ!!!」


グッと肩を引かれ、奏汰の方を向かされる。


「離してっ!!!」


奏汰の手を払い退ける。
その刹那、奏汰の平手が私の頬を叩いた。


「痛っ・・・」
「ごめん、楓。ほんとに、ごめん。」


取り乱す奏汰を振り切って、部屋の鍵を開け、部屋に滑り込む。
奏汰に叩かれた頬が痛む。
頬を冷やそうとか、痛かったとか、そんなことよりも、一刻も早く、ここから、奏汰の傍から居なくなりたかった。


どうして?どうしてここまでされなきゃいけないの?


大き目の旅行鞄に下着と当面の服、日用品、化粧品を詰め込む。
ドンドンドンと外では、奏汰が私の名前を呼びながら、部屋の戸を叩いてる。


そんなことはお構いなしに、私は鞄に次から次へと放り込んだ。


< 32 / 84 >

この作品をシェア

pagetop